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教室に荷物を置いたあと、いつもと変わらず体育館で校長の話を聞いている。
相変わらず長いし、退屈。大して代わり映えのしない事ばかり話している。
私は何度目かのアクビを噛み殺した。
「続きまして、今年度より新たしく我が校に就任なされます先生のご紹介です」
司会の言葉にも大した興味はなかった。
けれど、斜め後ろにいた大和が、「あ」と小さく声をあげたから、私もつられて視線を上げた。
「皆さん、初めまして」
にこやかに挨拶をしているのは、校門の所であった男だ。
「矢島圭輔【ヤシマ ケイスケ】と云います。担当は数学、生活指導部にもなります。僕は桜が好きなので、この素晴らしい桜並木を毎日通れるのを嬉しく思います」
彼は簡単な挨拶をして、終わると次の新任教師に変わる。
合計四人の紹介と挨拶が終わり、入学式の準備が終わるまで私たちは一旦教室に戻される。
私は、けだるけに歩きながら友達と談笑している大和の制服の裾を引っ張った。
「大和、入学式サボろ?」
大和は少し目を丸くしてから、にかっと笑った。
「当然!」
隣にいた大和の友達もサボると言ったが、大勢だと目立つと大和が言いくるめた。
一度人の波から抜け、ある程度人通りの少なくなった廊下を歩く。
「サクから言うの、珍しくね?どした?」
「…なんでもなぁい」
私は大和と握った手を大きく振って答える。
本当に意味なんてない。
「サクは、何かあるとすぐクセがでるよな」
「クセ?どんな?」
「教えなぁい♪」
さっきの私の口調を真似て、今度は大和が手を振りあげて笑った。
私は首を傾げる。
何か変なクセってあったかな。
「どこ行く?」
「んー、見つからなさそうなトコ」
「じゃ、屋上行くか」
屋上は立ち入り禁止で、普段は扉に鍵がかかっている。
だが、私たちは勝手に作った合鍵を二本持ってたりするので、自由に出入りしているのだ。ちなみに、大和の特技はピッキングだったりする。つまりは、たとえ鍵がなくても楽勝なのだ。
そういう訳で、私たちのサボり場は屋上に決定した。
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