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まだ少し風は冷たいが、春の暖かな陽気のおかげで過ごしやすい。
屋上にも、風が舞い上げた桜の花弁がいくつか広がっていた。
「あーあ、この時期は何処に行っても桜ばっかでヤになる!」
「俺はわりと好きだけどなぁ」
私の愚痴に苦笑を返し、大和は私の頭を撫でた。
「だから、サクも好きだよ」
「……だからの意味がわかんない」
唇を尖らせれば、大和はそれでいいと笑う。
私は少しそれが嫌だ。
私の嫌いな桜と同列にされてるのは不満だ。
だからと言って、大和の好き嫌いを強制する気はないけど。
「ふぁ~。なんか春って眠くね?」
「春眠暁を覚えずだね。大和は一年中だけど」
アクビをして言う大和に軽口を返せば、軽く小突かれた。
大和はフェンスに寄りかかり、片膝を立てて座り込んだ。
私は迷う事なく寝転がり、頭は大和の太股にのせる。
それが、いつもの私たちのスタイルだ。
「なんかさー、普通逆だよな」
「何が?」
「膝枕って、女が男にするモンじゃね?」
「男女差別反対。良いじゃん、膝っていうか腿だし」
実際に膝を枕にしたら、硬くて痛そうだ。
「もしかして、大和。してほしいの?」
純粋な疑問を問えば、普通に否定された。
「お前、肉ないじゃん。その細い足に頭やっても、絶対骨あたって痛い。ガリガリ娘」
「…………失礼な。スレンダーボディーって言ってよ」
骨があたる程細くはないと思う。勿論、そんなに肉付きもよくないけど。
私は全体的に脂肪も少ないやせ形だ。小さい頃からそうだから、多分体質。
個人的には、胸にくらいもう少し脂肪があってもいいと思う。ペッタンコではないけど、現実は残酷。
「大和、眠い」
「俺も」
「寝つくまで、肩の辺りとかトントンして」
「むしろ俺がしてほしいわ、アホ」
文句を言いながらも、結局はしてくれるから、大和は優しくて甘い。
今日は歌つきだ。多分、大和が普段聴いてる曲だと思う。
私は心地好さの中、眠気に身を任せる。
いつも眠る時のクセで耳を手で塞ぎかけたが、何となく勿体無いと感じて、大和の声を聴きながら眠りについた。
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