桜吹雪

5/12
前へ
/12ページ
次へ
 まだ少し風は冷たいが、春の暖かな陽気のおかげで過ごしやすい。  屋上にも、風が舞い上げた桜の花弁がいくつか広がっていた。 「あーあ、この時期は何処に行っても桜ばっかでヤになる!」 「俺はわりと好きだけどなぁ」  私の愚痴に苦笑を返し、大和は私の頭を撫でた。 「だから、サクも好きだよ」 「……だからの意味がわかんない」  唇を尖らせれば、大和はそれでいいと笑う。  私は少しそれが嫌だ。  私の嫌いな桜と同列にされてるのは不満だ。  だからと言って、大和の好き嫌いを強制する気はないけど。 「ふぁ~。なんか春って眠くね?」 「春眠暁を覚えずだね。大和は一年中だけど」  アクビをして言う大和に軽口を返せば、軽く小突かれた。  大和はフェンスに寄りかかり、片膝を立てて座り込んだ。  私は迷う事なく寝転がり、頭は大和の太股にのせる。  それが、いつもの私たちのスタイルだ。 「なんかさー、普通逆だよな」 「何が?」 「膝枕って、女が男にするモンじゃね?」 「男女差別反対。良いじゃん、膝っていうか腿だし」  実際に膝を枕にしたら、硬くて痛そうだ。 「もしかして、大和。してほしいの?」  純粋な疑問を問えば、普通に否定された。 「お前、肉ないじゃん。その細い足に頭やっても、絶対骨あたって痛い。ガリガリ娘」 「…………失礼な。スレンダーボディーって言ってよ」  骨があたる程細くはないと思う。勿論、そんなに肉付きもよくないけど。  私は全体的に脂肪も少ないやせ形だ。小さい頃からそうだから、多分体質。  個人的には、胸にくらいもう少し脂肪があってもいいと思う。ペッタンコではないけど、現実は残酷。 「大和、眠い」 「俺も」 「寝つくまで、肩の辺りとかトントンして」 「むしろ俺がしてほしいわ、アホ」  文句を言いながらも、結局はしてくれるから、大和は優しくて甘い。  今日は歌つきだ。多分、大和が普段聴いてる曲だと思う。  私は心地好さの中、眠気に身を任せる。  いつも眠る時のクセで耳を手で塞ぎかけたが、何となく勿体無いと感じて、大和の声を聴きながら眠りについた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加