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肌寒さと微かな温もりに目を覚ませば、私には大和の学ランの上着が掛かっていた。
視線を上に向ければ、大和がうつ向いて寝ている。
半分開かれた唇が、少し間抜けだ。
「……大和」
寝ているのだから、当然返事はない。けれど、大和は小さく震えてくしゃみをした。
自分だって寒いのに、気を遣ってくれたらしい。
バカだなぁと、愛しさが胸を暖かくする。
そう言えば、大和の寝顔を見るのは久しぶりだ。
そう考えて、体を起こして寝顔観察をする。
眠る顔にはあどけなさが残り、昔とあまり変わらないなと思う。
頭を撫でて見れば、相変わらずのふわふわ猫っ毛だ。触り心地も昔のまま。
けれど、いつの間にか背丈の差は広がるばかりだし、骨格もしっかりとしている。
大和は成績優秀というワケではないが、スポーツは得意だし、親しみやすい明るさがある。顔もけっこう良いらしい(よく同学年や下級生が騒いでる)。
けっこうモテてるけど、彼女はいない。多分。
何人か元カノはいるけど、長続きしてない。
改めて観察してみると、一つの感想が浮かび上がった。
「変な奴」
思わず呟いた瞬間、頭を叩かれた。
「った!起きてたの?」
「うん、サクが髪触った辺りをから」
大和は軽くアクビをする。
「なんかチューされんのかなって、寝たふりしてみた」
「………バカじゃないの」
なんで私が大和の寝込みを襲うのか。呆れついでにため息を吐く。
「ってか、今何時?」
もう入学式は終わったのだろうか。その後のHRも終わっているのなら、教室に戻って鞄を取り、帰るだけだ。
「んぁー、もう下校時刻過ぎてる」
少し寝過ぎたなと笑って、体や服に着いた埃や花弁を払う。
ついでに大和には上着を返した。
「お腹空いた。帰りになんか食べてこ?」
「おー、マックなら奢ってやるよ」
「パスタが良い」
「自分で払え、贅沢者」
結局、昼は奢って貰えるマクドナルドに決定した。
私たちは何を食べるか話ながら、屋上の階段を降って行った。
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