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おばさんが用意してくれた私用と大和用のサンドイッチ二皿は、些細な違いがある。
私は刺激物が嫌いだから、私に渡されたサンドイッチにはカラシ不使用なのだ。
「おばさん、はじめから私が来るって思ってたのかな?」
タマゴサンドを食べながら首を傾げる。
要家で、サンドイッチのカラシを嫌う人間はいない。
明らかに家族以外の人物用に作られた物だ。
「さぁな。ま、サクが来るのが楽しみだからさ、あの人」
「ふぅん」
少しだけ、嬉しい。
まるで家族として受け入れられたかのような錯覚をする。
「そういやさ、サク。お前卒業したらどうすんの?」
「んー、わかんない」
「親の後追って留学とか、本家に帰る予定とかあるのか?」
「ないよ。嫌だもん、そんなの」
私は両親も本家も大嫌いだ。
華桜院の名も権力も財産も要らない。自由になれるなら、そんなもの全部棄てる。
ただ、本家はそれを赦さないけれど。
「んー、お前も大変だよな」
スープを飲みながら、大和が頭を軽く叩いて撫でた。
私は素直にそれを受け入れる。
「大和が、私の家族ならよかったのに」
そしたら、きっと。
大和は少し目を丸くしてから、悪戯っぽく笑った。
「なんなら俺の養子になる?」
「私のが3日年上だもん。無理でしょ」
「じゃあ、ウチの子になれ。半分以上そうだけどな」
二人で顔を合わせて笑った。
本当に、ここは居心地が良い。
食事が終わると、大和はベッドに背中を預けて、その辺から適当に雑誌をとって読む。
私は、定位置である大和の膝に頭をのせて寝転がり、ケータイをいじる。
その内に寝てしまう私を、大和がベッドの上に運んで寝かせてくれるのが、いつものスタイルだ。
どうにも心地好くて、つい睡魔の誘惑に負けてしまう。大和も、私を寝かしつけるかのように頭を撫でたり、ポンポンと軽く叩いてくれるものだから、余計にだ。
友人とも幼馴染みとも、勿論恋人とも少し変わったこの曖昧な距離感が、私は好きだった。
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