―文化祭前夜―

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 体育館の裏手で携帯電話を握る一人の少女。  苛立った様子でそれを耳に当て、コツコツと、真新しい革靴の先で地を叩く。 「なんで出ないのよ~もう! 希望の奴何やってんのかしら」  目を吊り上げ体育館の壁を靴裏で蹴り上げているのは、希望と同じ新一年生の上熊須カリンであった。  肩の辺りまで伸びたショートに、極端に小柄な体駆。そしてその矮駆には明らかに不釣り合いな程の、巨大な二つの膨らみ。 「あーもー! 連絡取れなきゃ携帯の意味無い!」  外壁をまるで親の仇を見るような目で睨む。  気が抜け、そして溜息。
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