―文化祭前夜―

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 怪しい。  どこからどう見ても怪しい。  けど、ついでに言えば外見は結構タイプかも。 「希望のこと、知ってるの?」  カリンが探るように尋ねる。 「知ってる。案内しようか?」  手を差し出してくる少年。  カリンは身を引いて後退る。はいはいとついていけばどこに連れていかれるか、何をされるか解らない。  精一杯の虚勢を張って少年を睨みつける。 「そんな怖い顔するなよ。人の厚意は素直に受け取るもんだ」 「ふんっ、どうだか」 「疑り深い奴だな」  少年は両手をあげ、溜息を吐く。やれやれのポーズである。 「そこまで言うなら、仕方ない。教えるのはやめた」  カリンに背を向け、歩き出す。 「じゃあな」 「あ……ちょ――」  手を振りながら中庭へと消えて行く少年。カリンはその背中を険しい様相で睨んでいた。
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