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これは、とある古ぼけた神社に住まう座敷童と、天の邪鬼の物語。
素直で可愛らしい座敷童と、意地っ張りな天の邪鬼。
性格も正反対なこの二人だが、意外に仲が良いのである。
座敷童の、桜の色をした小さな唇から、
くすくすと可愛らしい笑い声が零れる。
紅葉のような、小さな柔らかい手がくしゃくしゃっと天の邪鬼の髪を乱した。
「……何スンだよ」
「天の邪鬼の髪の毛、柔らかいね」
いいな、と羨望の声。
お前のだって十分柔らかいだろうがと言う声は、小さな天の邪鬼の胸の中にしまわれた。
「ねぇ、折角だから髪の毛結ぼっか?」
「ハァ?」
いきなり何を言い出すんだ、と天の邪鬼は思った。
眉間に思いっ切り皺を寄せて。
「きっと、可愛いよ。
ねぇ、結ぼ?」
しかし、花のような愛らしい笑顔でお願いされて、断れない男が果たして何処にいるのだろうか?
「でーきたっ!ねぇ、見て!!
かわいいよ!!」
「誰が見るかっ!
さっさと解けっ!!」
結局、髪の毛を結う事を許したが、自らの姿が映る鏡を見る事は反対した天の邪鬼。
えーかわいいのに、と不満げにブツブツと文句を言いながら、座敷童は天の邪鬼の髪の毛を結んでいた髪紐を一つ一つ解いていった。
解く度にさらりさらりと髪の毛が下りてゆく。
「いいなー……
天の邪鬼の髪……」
天の邪鬼の、淡い稲穂のような色の髪を一房掴みながら座敷童は呟く。
先程まで括っていたのに、一切の乱れも無い髪。
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