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「ズリィ~よなぁ❗」
俺の隣りの席で、焼酎の水割りが入ったグラスを右手で回すように揺らしながら、先輩が言った。
何の事だか分からず、俺は聞く。
「何がですか?」
「何が?って…」
先輩はグラスをコースターの上にドンっと置き
「お前だよ❗お前のこ~と❗」
ビシッと人差し指を俺の鼻先近付くに突き出した。
俺は、そんな先輩の行動にギョッとし、少し後ろへたじろいた。
「な、なんすか⁉急に…もう酔ってんすか~?」
先輩の腕を軽く手で押し返し、俺は椅子に座り直した。
今日、そんなに飲んだっけ?
7時から会社の先輩で、俺の2つ年上で30歳の柴田さんと2人で仕事終わりと同時に、このスナックに来て~…まだ8時ちょい過ぎぐらいだぜ?
飲み始めて、1時間くらいしか経ってない。
飲むペースもいつも通りだし、柴田さんは別に酒に弱い人じゃないし、日本酒飲んでるワケじゃなく、焼酎の水割りだし。
ほら❗
いつもの柴田さんらしくない行動に、俺らが座っているカウンターの前に立っている女の子まで
「なんか今日は柴田さん、いつもと違う~❗」
な~んて言ってんじゃん。
そんな俺の心配をよそに、柴田さんは目線を俺から女の子に移した。
「華奈(カナ)ちゃん❗そう思わない⁉」
全く、日本語として成り立っていない会話を柴田さんは華奈ちゃんに吹っ掛ける。
…ったく…
だから、何が『そう思わない⁉』だよ❗
全然、何の事言ってんだかな~?
この人は…。
俺は黙って自分の焼酎の水割りを飲みながら、柴田さんと華奈ちゃんのやり取りを見る事にした。
アプリコットカラーのロングヘアーを上品に巻き髪にし、チョットタレ目でクリクリの瞳。
目が覚めるような真っ赤なカクテルドレスが真っ白な肌に良く似合ってる22歳の華奈ちゃん。
まっ、胸がちょっと小さいのは、ご愛嬌って事で。
そんな華奈ちゃんは、柴田さんからの意味不明な同意の求めに対し
「うん❗うん❗そう思う~❗」
って、返事しちゃったりして…。
…って、おい❗
華奈ちゃん、ぜってぇ~、話聞いてなかったし、意味も分からず、ただ相槌打ってるだろ~⁉
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