かくれんぼ（仮）

エピローグ

　湖。
　ﾕﾗﾕﾗと揺れる少女が浮かんでいる。
　波に揺られ、岸部に近づいたかと思うと、波に掠われ、また岸から遠ざかる。
　少女はﾋﾟｸﾘとも動かない。
　ただ、波に身体を任せているだけ。
　少女は白い着物を身に纏っていた。
　まるで湖面に一輪の白い華が咲いているようだ。
　少女は動かない。
　瞬きさえ動かない。
　半開きの唇からは、もう二度と言葉を紡ぐことも、呼気が吐き出されることもない。
　ただ、波に操られるだけ。
「違う、この子じゃない」
　浮かぶ少女を見つめる少女が一人、岸辺にただずんでいる。
　いつまでも華が湖面に咲いている。
　いつしか、ゆっくりとゆっくりと沈んで行くまで、白い華は揺れていた。