第1幕

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第1幕

 山間の道を車は猛スピードで駆けて行く。  うねうねと曲がる山道をタイミングよく駆け抜ける窓の景色を見ながら、薺は欠伸を噛み締めた。  運転席と助手席では、母親と叔父がスピードを落とせと言い合っている。  山道に入ってすでに一時間程度経とうとしていた。  すれ違う対向車もなく、前にも後ろにも車の姿は見えない。  車窓から見える景色は、夏の遮光がギラギラに輝いている。  遠くに見える山の稜線が大分目線と同じ高さに近づいて来ていた。  近くの景色は、青々とした木々が太陽の元照り輝いているが、下を見れば落ちれば一貫の終わりだと崖がパックリ口を開いて待っているようだ。
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