第1幕

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(やっぱり辞めといたらよかったかな…)    まだ、言い争っている運転席の後頭部を見ながら、薺はもう一度欠伸を噛み締めた。  そろそろ夕暮れ近い時間だと言うのに、太陽はまだその威力を失ってはいない。  時たま、木々の切れ目から差し込む陽光が、これでもかと言わんばかりに車内に降り注いでくる。  薺は眩しさに目を細めながら過ぎ行く木々を見送ってゆく。  一つ一つは頼りなさそうな木々が集まって山の稜線を作っていく。  どこまでも連なる山々が、車がカーブを曲がる度に迫ってくるようだ。 (ド田舎やな…)   薺はどこまでも続く山間に心の中で呟いた。
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