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(こんなとこ、ほんまに住めるんかな?)
市街地から程遠い村に、祖母はもう何十年と一人で暮らしていた。
都会ではないものの、市街地に産まれたときから住んでいた薺には、祖母の暮らしには想像もつかない。
便利であろうはずはない。
それでも、祖母は頑として村を出ようとはしなかった。
(わけわからん…)
薺にはぜったい真似できない。
こんなド田舎に住むなんて。
そのとき、叔父が急ブレーキをかけた。
薺達の身体が前にかたげる。
ちょうどカーブの曲がり角で滅多に来ない対向車とかちあってしまった。
互いにクラクションを鳴らして車はすれ違う。
「怖いなぁ。だからもっとスピード落としてって言ってるのに」
母親が、それ見たことかと、素早く抗議の声をあげる。
それに対して叔父はぶつくさと文句を言っているようだが、薺の耳にははっきりと届かない。
それでも幾分かはスピードを落としたようだ。
景色がゆっくりと過ぎ行く。
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