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「というわけで信頼できる部下の元へ置いているわけだ」
そ、そーですか。気に入った部下に厄介な事を押し付けるのは、どうも榎本師団長なりの愛情表現なのらしい。厄介な事というのは時として死地と同義語にもなるが。例えばそう──特殊遊撃戦隊。
「貴官にも話しておくが第3師団は海上から愛知に上陸し、静岡方面の防衛を行う。だがすぐに静岡に行くわけではない。愛知には2、3日滞在するだろう」
「そうですか。で、どうして小官にそのようなことを?」
榎本師団長は歳に似合わない悪戯っぽいウインクをした。
「特に意味はない。気にするな」
榎本師団長はあまり無駄なことはしない。だから何か意味があると思ったのだけど……。思い過ごしだろうか。総務部だから知らされたのか。まぁいい。師団レベルのことは僕にはどうしようもないのだし。
「要件は以上だ。退室してかまわない」
胸中に一抹のしこりを残したまま、僕は一礼してきびすを返す。
ちょっと早足なのは冥さんや香月が心配になったわけではない。そりゃ2人の小競り合いは危険極まりないが。
「あと──」
ドアノブに手をかける寸前、榎本師団長が口を開いた。
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