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「これは助言だが……滝野梨絵二等陸尉には気をつけろ」
滝野梨絵二等陸尉……ちょっと待て、もしかして滝野二尉のことか。
滝野さんならわけがわからない。どうして彼女に気をつけなければならないのだ。散り散りにはなってしまったが、元同僚で腕のたつ仲間に。
「返事はいらない。最後にもう一度だけ訊く。後悔はしていないのだな」
僕は最後の問いかけには答えることなく、扉を閉めた。
僕は第13特殊遊撃戦隊が解散してしまったことを後悔していない。むしろ好意的にも思う。
おかげで彼女はもう戦場には出られない。自由は失ったが、それでも死ぬよりはいい。生きていて欲しい。僕はそう思って……いる。
「お前はあの子を死なせたくないから言っているのだろ? どうにも昔のお前の恋人と重なって見えるから。お前は惚れた女を傷つけられたくないからな」
自分しかいなくなった部屋の中で、榎本師団長が長々とつぶやいたのを僕は知る由もなかった。
第46話『師団長の因果』END
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