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黙っていたからといって、それは裏切りではない。
欺いたからといって裏切りではない。
まだ仲間だと思っているならば。
自衛軍の総司令部は首都愛知県に存在する。政治の中枢機能も壊滅した千代田区から名古屋市に移動された。それにともない自衛軍の関連施設や駐屯地も、愛知県のいたる所に多数増設されたのである。
第3師団司令部は所属部隊よりも一足遅れて海上航路を使い、愛知県に上陸した。そして遷都時に増設された基地ではなく、古くから点在する守山駐屯地に全部隊を集結させていた。
軍用車両から降りるなり、冥さんは辺りをキョロキョロと見渡す。どうしたんだ?
「ここが首都ですかー?」
冥さんの目がキラキラ輝いている。何やら嫌な予感がしなくもない。
「そう、首都愛知県。そしてここは名古屋市北区にはいるのかな、そこにある守山駐屯地よ」
すかさず香月が口をはさむ。まぁ完璧なので、ぐうの音も言えないけど。さらに付け加えるなら、
「旅団規模にもなる首都守備軍の本拠地だよ」
「へぇー。春日さんは物知りなんですねー」
「……あたしは無視かい」
怒気を露わにする香月は襲いかからんばかりだ。
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