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頼むから着いてそうそう喧嘩はしないでくれ。
総司令部からの命令により、第3師団は豊橋駐屯地へと移動することとなっている。
その調整のために2、3日ほど都心名古屋に滞在することになったのだ。その間は外出許可も出ているため、冥さんは浮かれ気味なのだろう。あと香月を含め部下たちも。
だが、僕はとても浮かれる気にはなれない。と言うのも、おそらくこれは近々起きるであろう決戦への備えだからだ。
山岳戦を得意とする第15旅団は長野県松本駐屯地から岐阜県中部へと移動、第10師団や第14師団は岐阜南部から美濃方面に配置されている。
これは防衛戦を仮定しているに違いな──
「春日さん! はーやーく行きますよー!」
冥さんが僕の手を、握りつぶすかと疑うほどの力で引っ張る。そんなに慌ててどこへ行くんだよ?
『休暇です!』
香月と共に目をキラリと光らせて口を揃える。いや、ちょっと待て。
「周りを見てみろ」
「周りですかー?」
何十台もの軍用トラックなどが並び、兵士たちが武器弾薬を下ろしている。武器庫に搬入するためだ。
「それに僕たちもたーっぷり仕事があるんだからな」
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