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いくらなんでも我慢はできないぞ。
──唐突にギルバートは右足を軸にして反転した。そして振り返りざまに、懐から消音器尽きの拳銃を取り出して発砲した。
弾丸は僕の顔を掠めながら飛んでいった。犠牲になった髪の毛がはらりと落ちた。
ギルバートは拳銃を懐にしまうと、
「さて、話すとするか」
「ちょっと待てぇぇぇっ! 今発砲しただろ!? 当たりかけたぞ!」
「なるほど。回避能力はそれほど高くないようだな」
頭がくらくらしてきた。回避能力のテストをするためだけに発砲するなんて……。彼の考えることは理解し難い。
「まさか。キミに向けて撃ったわけではない。当てる自信もないしな」
ギルバートはそこを見ろと言わんばかりに僕の背後を指差す。眉をひそめながらも僕は振り返った。
長く伸びている廊下のちょうど真ん中あたりだろうか。1人の男が倒れていた。もしかしてと思い、ギルバートを見た。彼はうなずくと、
「総司令部……いや、上層部直属の諜報部だ。ここ最近、つきまとわれていてな。ちなみに実弾は使ってないから安心しろ」
そりゃ殺人沙汰は勘弁ですけど……。
「でもなんで諜報部が?」
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