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よくよく考えてみたら天地隊長の性格や軍の立場は知っていても、過去のことは全く知らないや。どこ出身でどこで生活していて家族はどうなのか。
「聞き方が悪かったな。天地レイと消去に関してだ」
なるほど。そっちだったか。
「適合条件のことですか?」
ギルバートは首を縦に振る。適合条件と言われても僕が知っているのはせいぜい、
「因子に感染しているかいないか。くらいしか」
思いがけない返答なのかして、ギルバートは目を丸くした。そりゃそうだ。なんたってこのことは、椎名さんから聞いたのだから。
「なるほど。椎名が言ったのか……。そうだ。スィエルとの接触により、超低確率により発生する奇病、因子に蝕まれる必要がある」
椎名さんに教えてもらうまでは、全く知らなかった。
この奇病の発生率は非常に低く、最大の特徴は特異な症状だ。決して死病というわけではない。むしろ身体能力が大幅に増加するのである。例えば筋力や脚力、瞬発力などが並みの人以上に出せるらしい。
「──そう。春日三佐、キミのように」
ギルバートのえもいわれぬ視線を受け、僕は黙り込んだ。いつから気づかれていたのだろう。
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