第48話 天使と椎名

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 それにどうも背中に感じる柔らかい感触が気になるんですけど。……なんだか惜しい気がするので黙っておこう。 「場所は問題ないけど、第3師団の後方には味方がいないんだよ」 「だから有事の際、第3師団が敗北したら敵は首都まで一直線なのです。わかったら今すぐ離れてください、冥」  ボールペンを握りしめた香月が、殺気を振り撒きながら言った。  不思議と顔は笑っているのだが、手の中のボールペンがギシギシと悲鳴を上げているのはいかがなものか。何よりも僕が火花を散らす2人の間にいるのが恐ろしい。  毎度の事ながら、部下たちは無視して仕事に打ち込むし。 「と、とりあえず落ち着いて話しなさい」  さりげなく冥さんから離れてなだめてみる。 『無理です』  口を揃えて即座に断られた。なるほど……そっちがその気なら僕にも考えがある。  僕は未だ視線をぶつけ合う2人の机に、他の部下達に任せるはずだった大量の書類を置いた。ぎこちない動作で首を回す2人。  僕は満面の笑みを浮かべて、 「冥さんと香月はこの仕事が片付くまで外出許可はなし。あ、みんなは今のが終わったら許可出すから」
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