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仕事が減って喜ぶ部下と対照的に、冥さんと香月は今にも泣き出しそうな目で僕を見つめる。
「そ、そんなー。あんまりですー」
冥さんの瞳には溢れんばかりの涙が溜まり、うわー……ちょっとやりすぎたかな。僕は冥さんの両肩に手を置いてみた。
「何を言うんだよ冥さん。外出なしってわけじゃないんだよ。ただ仕事の量が増えただけなんだ。外出許可は今日だけしかでないけど、まだ朝の10時じゃないか。まだまだ時間はあるよ。14時間くらい」
腕を曲げて、冥さんの耳元に息が触れるほど近づいた。
「かかか春日さん!?」
泣きかけの顔がまるで嘘のよう、真っ赤になる冥さんなど無視して僕は言葉を紡いでいく。
「大丈夫、冥さんならできるよ。僕は信じてるから」
「……春日さん」
冥さんの肩をポンと叩くと、いつもの調子で言う。
「さぁ頑張れ」
「わかりましたーっ!」
まるで憑かれたかのように猛然と書類を片づけていく冥さん。いつもこんな風に仕事してくれたらなぁ、はい切実な希望です。あとなんかデジャブ。
「……三佐もけっこう腹黒いですね」
僕の隣に立つ香月は呆れかえって苦笑いをしていた。いったいなんのことやら。
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