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「春日さん、どうかしたんですかー?」
ボーっとしていた僕の顔を冥さんが上目づかいで覗き込んだ。てか顔が近すぎなんですけど。僕は冥さんとあさっての方向を交互に見てから、
「あっ、うん……ごめん。ちょっと用事ができた」
「えっ、急にどうしたんですかー!?」
冥さんや香月が何か言ったが僕の耳には届かなかった。意識は完全に冥さんたちから離れていたのだ。昼食を食べたばかりでツラいが、僕は猛然と人を掻き分けて走り出した。
今走らないと、きっと後で後悔する──かもしれないから。
いったいここはどこだろうか。建物の背と壁に囲まれた薄暗い道。どこかの路地だと思う。気がつけば周囲から人は消えていた。目の前に佇んで、背を向けている女性を除いて。
「よく見つけました──と言いたいですが、ワザとだから当たり前ですね」
凛とした透き通る声だ。元特殊技術開発局消去システム開発主任椎名。今は天地隊長暴走の責をとって解任されてしまった元軍属だ。
いつもの白衣はもちろん着ていない。ピシッとしたスーツ姿でどこか僕の姉に面影が重なる。
「それよりも、どうして椎名さんがここに?」
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