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「消去システムの情報を無に帰すため」
「天地隊長は天涯孤独では?」
「誰が言ったのそれ?」
誰って言われても……天地隊長からですけど。
全く状況を把握できていない僕に、椎名さんはあからさまにため息をついた。少し腹が立つ。順を追って説明してくれなければ、わからないに決まってるだろうが。
「1年前でしたっけ? 病院で話しましたよ。天地レイが消去適合者である理由を」
そう言われて、僕はやや冷静さを取り戻した。記憶の糸を手繰り寄せて、必死に思い出す。そういえば──
「天地レイは、スィエルとの接触以外の方法で因子に感染しているわ。その方法はなに?」
まるで子供を諭すような語りかけ方だ。天地隊長が因子感染した理由……。
「東京・静岡隕石の被災者……いや、でも天地隊長の家族はスィエルに殺されたって……まさか──」
弾かれたように椎名を見た。椎名はこの上なく満足そうに笑っていた。
「刷り込みよ。スィエルへの憎悪をより掻き立てるためのね」
場所は変わって、自衛軍総本部大会議室とでも称しよう。
「ふざけないでもらおうっ!」
衝撃で机に乗せられた資料が小さく舞い上がる。
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