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酒井健二方面総監がとぼけてみる。口元がひくつているのは隠しきれてはいない。
対する榎本陸将は余裕の表情だ。どうやら彼はよほど酒井健二方面総監が嫌いなのらしい。
「ふむ。東部方面軍の東京侵攻の際、東京湾より特殊部隊を上陸させた人が何を言うのかね」
「なっ……!?」
先崎統合幕僚長の制止はやや遅かった。すでに酒井健二方面総監は大きな墓穴を掘ったのだ。
「ならば特A機密とはなんだ!?」
先崎統合幕僚長は頭を抱えたくなった。なぜ気づかない! 数を味方に付けるヤツは確証を持って勝負に出ているのだ、と。
「スィエル──いや、天使共の巣窟。平行宇宙への入り口だった場所、とでも言ったほうがいいかな?」
チェックメイトを宣言された。
「元々天地レイは静岡隕石の被災者よ。そして唯一の生き残りであり、助かる見込みのない重傷者。そこで消去システムの実験体として天地参謀長が推したのよ」
「自分の娘を……?」
椎名さんは首を振る。
「ただ、間違ってはいけないのが、消去システムがもつ自己修復機能よ。参謀長はそれで天地レイを助けようとした」
なるほど。
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