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とうとう僕もヤキが回ったのかな。
「現在そのオリジナルの『片割れ』は静岡隕石落下地点に移動中です。これは上層部も知りません」
眉間にしわを寄せたが、立ち位置からして見えはしないだろう。だったら質問禁止と言われたけど、
「片割れ?」
「えぇ、片割れです。なぜならそれはもとは唯一無二の1つ、万物を錬成し消去する者」
ちょっと待て……その件(くだり)は前に聞いたことがあるぞ! 椎名さんが僕から離れた。
「当たり前です。1度、オリジナルは果てましたが、そのオリジナルの残骸より作られたのが──消去システム。そして分裂したそれが……もうわかりますね。あの時言ったように消去システムはスィエルそのものなんですよ」
その言葉を残して気配が消えた。慌てて振り返るも、椎名さんはどこにもいない。USBメモリーが落ちているだけ。僕は言いようのない脱力感にみまわれて、地べたに膝を付けた。
椎名さん、あんたはいったい何者なんだよ。俺に上層部が気づく前に天地隊長を助けださせるつもりなのか?
僕の問いかけは答えを得る前に空気に溶け込んだ。
第48話『天使と椎名』END
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