第49話 陰謀と二重奏

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 ただ目をつむりたかった。せめて夜、誰なのか見当もつかない客人が訪ねてくるそのときまでは。  娯楽施設とかなりアバウトな場所指定をするのだから、おそらく素人だと思う。少なくともこの駐屯地の隊員ではない。  隊員ならば詳しい場所指定もするはずだ。なにせ娯楽施設と言われても売店や隊員クラブ、風呂も娯楽施設と言えばそうだろう。  周囲は暗闇に彩られ、光は遠くに見える小さなものばかり。しかし場所がわからないから、ただただ僕はあてもなく徘徊していた。  漂う雰囲気が故か自然と足音を殺してしまう。まぁそのあれだ、端から見ればかなり怪しいヤツになってるんだろなぁ。自覚してるからいいけど。 「ったく、曖昧な場所指定が一番嫌なんだよなぁ。時間も曖昧だし」  言葉にしたら本当に起こりそうだから言わないが、来るという確証もありはしないのだ。  最悪の場合、このまま会えずさらには隊舎抜け出しで厳しいお叱りを受けるということも……。 「ははっ、笑えねぇ」  行けども行けども人はいない。やっぱり一ヶ所に待っているほうがよかったのか。ちょっとばかし悔やまれる。
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