殺意の理

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警視庁捜査一課川島刑事は飲みかけのブラック缶コーヒーを片手に唸るしかなかった。 彼の頭痛の要因は今朝自宅に送られてきた封筒の怪文書と数枚の写真だ。 ~~~~~ 送られてきた、というのは語弊があるかもしれない。 まず切手が貼られていなかった、そして封筒には差出人の名前も書かれていなかった。 しかし「川島修刑事殿」と受取人の名前はみみずがのたくった様な文字で書かれていた。 彼は自分のフルネームと役職を誰かも分からぬ差出人が知っていることを疑問に思い閉口した。 この封筒は差出人が直接ポストに投函したものだろう。 封筒はA4の大きさのどこにでも売っている至極普通の茶封筒だった。 匿名の封筒自体にはさほど問題は無い。 何かの悪戯程度だと最初は思った。 実際同様の嫌がらせを隣に住む顔見知りの主婦が受け取ったと言っていた。 家内に「また帰りが遅くなるかもしれないが、行って来るからお茶漬けでも作って用意してくれ」と言い玄関のポストからダイレクトメールとその茶封筒を持ちそのまま出勤した。 職場で同僚から書類に目を通す程度の仕事を引継ぎ、それらをこなした後にふと茶封筒のことを思い出し鞄から取り出し備品のペーパーナイフで封を切った。 なぜペーパーナイフが備品として置かれているかというと、昔、送られてきた封筒を素手で開けて傷を負った者がいるからだ。 糊代の部分に薄いカミソリが仕込まれていた、当然誰かが封を切るまでカミソリのことなぞ送り主以外知る由も無い。 封筒とは違うが小包が送られてきたこともあった。 その小包には小型の爆弾が仕掛けられており小包を素手で開けてしまい、親指を失くした者もいる。 今ではX線で郵便物をスキャンする。 内部構造を確認しOKとするかNOとするかには専門職の人間が関与することとなる。 かくなる理由で郵送物には敏感に…細心の注意をしなければいけなった。 問題の茶封筒にはスキャンをした限りでは何の細工もされていなかった。 しかし手紙の文面と写真を見た彼は思わず息を飲んだ。
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