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大学三年の秋。
世間の同学年の学生たちは就職活動を始めていたが、私や周りの友人にとってはほとんど関係なかった。
友人、資産家の一人娘の静香や帰国子女の桜は、私と一緒に博士課程の同大学院へ進学する。
ただ学校内でもまれなことに結衣ははやくも、外資系会社に自身の努力で入った。
性格柄、彼女は積極的で前向きでまた、社交性に優れている。
そんな頼りがいのある彼女がいて、私たち四人は学部が違くてもとても仲が良かった。
最近結衣の進路が落ち着いたところで、久しぶりの合コンが予定された。
もちろん、結衣自身がお得意のエリートを誘って。
その日の相手は有名大の学生で、高学歴好きな桜は人一倍気を張っていた。
そして、十月半ばの日曜日。
一人自宅マンションでランチをとった私は、温かいシャワーを浴びてドライヤーで乾かした髪をタオルとかしていた。
今日の髪型は何にしようだなんて、するもくせに呑気にヘアアレンジの雑誌を眺めていた。
今秋の流行に晩秋にさしかかる今に遅くも感じていると、急にチャイムが鳴り響いた。
私はドアフォンを覗かず、無用心にドアを開けた。
いつもと変わらないチャイムの音だが、不思議にも主の高い透き通る声に感じたのだ。
笑顔で招き入れたチャイムの主は、静香だ。
控えめで礼儀正しい品の良さで家に入り、玄関の隅に静かにヒールの低いパンプスをそえた。
静香は今日も、淡いパステル調の服装をしていた。
そして、服装に似合いすぎる優しい笑みでソファーに腰かけた。
ふと彼女は内巻きにしたミディアムの髪を手で転がした。
私たちはつい目が合い、くすっと笑った静香は私の髪に視線がいく。
きっと私は彼女が来る前から想定していた…静香は私に近付いて、私のロングの茶髪に温めていたコテを巻きつけた。
テーブルに置いた小さな鏡に、静香の綺麗な手が見える。
その手つきは魅力的で、静香はこの瞬間とても生き生きしているのだ。
美容面に対して、繊細な静香は完璧だった。
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