That's a moment.

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静香は私の要望通りに、ゆるい縦巻きに仕上げてくれた。 ファンデーションを主に薄化粧にして、私はフリルのブラウスに少し硬めの黒いツイードを着て、下はスキニーを履いていた。 私は背が高いかそのラインが出る格好が好きだった。 準備が整うと二人で家を出て、すぐ近くの最寄り駅に行き電車に乗った。 ときには満員電車で窮屈な都心の電車でも、私も静香も愉快でいる。 車内だと二人でよく人間観察をした。 といっても品格のある静香とだから、他人に不愉快を与えるようにはしない。 普段…境遇として、外の世界で生きるさまざまな人間と同じ空間にいるのは私たちは稀なのだ。 また私たちは特に、これから行われる合コンにも執着しない。 まあ合コンは楽しむが、恋愛のパートナーを探すけとはない。 大学生活として味わえる、他人との出会いを好んでいる。 なんてそもそもは人好きな静香と一緒にいて、私は影響されただけだ。 そんな私たちを知っていながらも合コンに誘う結衣は、『華が出るから。』と言っていた。 でも彼女の内心にしろ、男に媚びない私たちは都合がいいだろう。 まあ私たちはそれも承知で、この場にいるのだから…もう暗黙の了解だ。 それに…あえて恋愛をしない理由を出すのならば、私には正真正銘の恋人がいる。 彼…尚人は私の二つ上で、私の父の取引先の企業の子供である。 私の兄の暁は彼と同級生で、幼なじみでもあった。 だから私と尚人は物心つくころには自然と思い合うようになり、付き合うようになって三年になる。 尚人は今年の夏に、暁と渡米した。 ボストンの大学に入学し、共同生活をしている。 しかし私は尚人が近くにいて時々会っていた間も、合コンや異性との出会いの場に立っていなかったわけではない。 私達には束縛という柵がなかった。 だからといって、嫉妬を超越した関係があると私は思っていない。 ただ私達にとっては、恋人よりも幼なじみの距離が必然だった。 そして資産家の娘である静香には、自分の家系よりもさらに優位な婚約者がいた。 政略結婚という、古典的な形式にとらわれた恋人。 また今時亭主関白を奮う彼を、静香はよく拒んでいた。 そして境遇として…私は母方の実家の宝石商の後継ぎでもあり、静香は政治家一家の嫁だった。 …決められたレールで生きる私たちには、外の世界という自由が新鮮だった。 また本当の自由を持っている結衣に対しても。
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