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待ち合わせ場所である駅で電車を降りた。
賑わう改札口に向かうと、早くも友人二人の姿を見つけた。
私達は少し不思議がりながら、つい小走りした。
今日もかなり早い時間に家を出たし、いつもは私達が二人をずっと待っているから。
「桜、今日は早くない?」
「いや…ついさっきまで、お昼食べてたの。そしたら結衣から鬼電がくるから。」
背の低い桜は、高いミュールをはく結衣を見上げて睨んだ。
不機嫌な桜を片目に、結衣は不適な笑みで頭に手を置いた。
「ふふ、今日ははずせないんだから。」
「私にも少しは譲ってよね?」
「仕方ない。」
待たされるのが嫌いな二人がどうもご機嫌で、私達を見向きもしないくらい軽い足取りで歩き始めた。
混み合う街の中にも関わらず、桜は楽しそうにスキップして結衣に笑いかけている。
結衣のにやけている横顔も目に映る。
後ろでのろのろ着いてく私達は、笑わずにはいられなかった。
場所は駅近辺のビルの最上階にある、イタリアンレストランだった。
ただ、そこは堅苦しい高級店ではなく、大学生が食事に出かけるようなアットホームなお店で、初めて来た四人は気に入った。
そして結衣がウェイターに声をかけると、店の奥にある個室の前に案内された。
店内の奥に進むほど、結衣の表情はどんどん明るくなる。
いよいよ案内された個室に着くと、一度三人に絶品の笑顔で振り返り、その勢いでドアを開けた。
「おっ、結衣遅えーよ。」
「海たちが早いの!」
結衣はそう食いかかりながらも、立ち上がった海の腕の中に抱き着いていた。
そして海に頭を撫でられ、甘い視線で交わしあっていた。
海は金髪のロン毛で色黒、原色のサーフ系の服を着ていて、いかにもギャル男だった。
豹柄のワンピースを着る…尤もギャル系の結衣と身を合わせる光景は、まさにギャル紙のカップル記事をみているようだった。
…いつもの合コンとは違い、初めからまんざらでもなさそうな雰囲気を出す結衣。
二人の世界に一瞬驚異していた私達と、席に座って寛いでいる彼の仲間は気まづい感じになった。
だが海という男は、空気を読む男らしい。
絡みつく結衣を離すと、「さあ、座って。」と言った。
やれやれと適当に席に着いて落ち着くと、ウェイターがコースの確認とファーストドリンクの催促に来た。
そして、いつもの流れで合コンが始まった。
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