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野球について博識どころか、ボークという反則行為すらよくわからない私とお母さんは、そんな二人の火花の散る激戦――涼の一方的な勝利だったけど――を余所に、夕食の準備を進める。
天井を仰いでいるお父さんとヤケに勝ち誇ったような表情を浮かべて、ニュースを見ている涼の分までキチンとご飯を入れたお母さんは、隣にて魂が抜けかかっているお父さんの頬を軽く叩きだした。
「お父さーん。ご飯の準備ができましたよー」
「嗚呼……世知辛い……」
う~ん、お父さんが壊れちゃってるよ~。
そんなお父さんの反応にやれやれと言わんばかりのため息を吐いたお母さんは、とりあえず私と涼の目を順々に見る。
「お父さんがこんなだから、先に食べましょうか。冷めちゃったらヤだもんね」
当たり前じゃん、とでも言いたげに首肯した涼の隣で、私も苦笑いを浮かべながら頷く。お父さん大丈夫かな?
「世知辛いだぁ……。世知辛いだぁ……」とお父さんが連呼している横で、私たちはいただきますを。
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