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「……ただいま~」
びしょびしょになってしまった制服の水気を少しでもなくそうと、一生懸命に叩(はた)きながら玄関の扉を開ける。
とりあえずテンションが低い理由は、雨で濡れちゃったことと、かなり遅い帰宅に怒られるかもしれないという不安の二点によるものです。
「……あれ?」
お母さんの怒った声だけでなく、お父さんの声や涼の声さえも聞こえてこない。リビングからなら、ある程度聞こえてきてもいいんだけれど……。
私の耳に届いてくるのは未だに雨の音だけということを不思議に思った私は、とりあえず自分の部屋ではなくリビングに行ってみることに。
濡れているハイソックスでフローリングの床を歩くのはかなり気持ち悪く、私は早足で目的の部屋の扉を開ける。
「……え……?」
時が、止まったような気がした。
一瞬、目の前の光景が理解できなかった。
私の目に映ったのは――
――赤く染まって横たわっている家族の姿だった。
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