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「お前……その涙、どうかしたのか?」
「え……?」
どうしよう。あの悪夢による涙はまだ完全に止まっていなかったらしく、翔に見られてしまった。
心配そうな面持(おもも)ちでジッと見つめてくる翔に、私はただ迷っていた。――まだ、言わないべきか。もう、言うべきか、を。
「いや、あの、その、これはね……」
目が泳いでいるということが自分でわかっていても、止めることができないくらい、今の私はいつもの私でいられなくなってしまっていた。
動揺を隠しきれない私は、とりあえずベッドで横になっていた体を起こして、目のまわりについている雫を手でぬぐい取る。
そんな私を見ていた翔も上体を起こして、両手を私の両肩に乗せてきた。ビクッと肩を跳ね上げて驚く私に、不安そうな表情を浮かべる翔はゆっくりと口を開く。
「……言いにくいことなら無理に言わなくていい。でも、無茶だけはすんなよ。いつでも頼ってきていいから」
「…………」
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