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どうして、なんだろう。
どうして、貴方に隠し事なんか、してるのだろう。
貴方に想いを告げたのに、なんで私は隠しているんだろう。
翔の言葉に堪(こら)えきれなくなってしまった涙が一斉に吹き出し、私はなんの迷いもなく翔に抱きつく。
私の突然の行動に少し戸惑っていた翔だけれど、ちゃんと私のことを抱きしめ返して背中をさすってまでしてくれた。
「ごめんなさい……! ごめんなさい……!」
謝罪の言葉。
戻ってきてからの四ヶ月、ずっと貴方に隠し続けていたことを、私はただ謝るしかできなかった。
翔はなにも言わずに、ただ私の背中をさすり続けている。翔の胸に私の顔があるから、どんな顔をしているかまではわからないけど、私は涙声で謝り続ける。
しばらくの間、翔の腕の中で泣いていた私は、そっと離れて翔の顔を見つめる。翔もなにも言わない。
――貴方には、すべてを知っていてほしい。貴方のいない世界で、私が見てきたことすべてを。……あの、悪夢の夜を。
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