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そして、自分のことで精一杯だった俺は、舞の俯く姿を見て気づく。舞はもっとつらいんじゃないか。苦しいんじゃないか。悲しいんじゃないか。幸せにしてみせる、なんて思っていたくせに、なにをやっているんだ俺は。
なんにも逆らうことなく、俺は俯いて唇を噛みしめる舞を抱きしめた。驚く声を発する舞に構うことなく強く、強く抱きしめる。
「ごめんな……? 気づいてあげられなくて、ずっとお前のそばにいたのに……」
「違うよ……。私が悪いの……。ずっと騙しててごめんなさい……」
涙が、止まらない。
俺も、舞も。
泣くなよ……。泣かない、って約束したじゃんかよ。なんで、俺が泣くんだよ。頼む、頼むから……。
◆ ◆
舞が落ち着くのを見計らった――もちろん、自分もだが――俺は、まだ時間が早朝だったということもあって、もう一度ベッドの中に入った。
二度と、舞に悪夢を見せまいと腕の中で寝かせた俺は、しばらく考えたあと、あることを思い出した。
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