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「まず一番最初に俺に言うべきだったろ!? なんで黙っ――」
「自惚れんじゃないわよ」
これから始まろうとしていた母さんへの憤りを、いとも容易く鎮めたのは、姉ちゃんの冷たい一言だった。
未だに顔をあげようとしない母さんを庇うように、俺のそばまでやってくるとそのまま平手打ちを俺の左頬にくらわせた。なにもできないでいる俺に、姉ちゃんは続ける。
「あんた、小学生のときに舞ちゃんがいなくなって、どんな顔してたか知ってる? 見るに耐えない、酷いものだったわよ。麗人くんや瑞穂ちゃんたちが支えていてくれたから、立ち直れたんでしょ」
「…………」
――忘れるもんか。
教師には目つきが悪いと何度も叱られ、関係のないクラスメートに暴力を振るい、不良にまで絡まれてしまったあのころを。
麗人たちに感謝している。そんな堕ちるとこまで堕ちてしまった俺を、見捨てないでそばにいてくれたのだから。
過去の荒(すさ)んだ自分を思い出し、唇を噛みしめる俺に、姉ちゃんは続ける。
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