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だが、彼の記憶には自分の家の周りにこんな大きな池はない。まして、季節外れのこの空間が彼の頭を混乱させている。
もし、現実ならば瑞希の姿もあるはずだ。だが人影はおろか動物の気配すらここにはない。
「どうなってんだ…」
彼が振り向こうとした瞬間!!
「うわぁぁぁぁ!!」
足を滑らせもと来た道を転げ落ちる。止まることを知らず長い坂道をノンストップで転がり落ちる。時折ある石や岩が容赦無く和馬の体に打ち付けられる。
「うわっ!!」
「きゃっ!?」
林から放り出されてようやく止まった。可愛い悲鳴の方を見ると、瑞希の驚く顔が。
「どうしたの、大丈夫!?」
「痛てて…瑞希どこにいたんだよ?」
打撲の痛みに耐え体を起こし瑞希を見上げる。
「アタシはずっとここに居たよ?」
瑞希の答えに携帯を開く。先ほどの上る前の時間からまだ一分もたっていなかった…
「嘘だろ…?」
「何が?」
不思議がる瑞希の手を借りて痛む体を立たせ先ほど登った階段を探す。だが、同じ場所を何度探せどそんなところは、見付からなかった。
「なんで、確かにここに道が…う…」
「ちょ…和馬ぁ!」
遠退く意識のなか誰かが…
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