バースディ

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「夢…だよな?」 先ほど現実から入った空間と全く同じ風景に和馬は混乱していた。 「訳わかんねぇ…一体どうなっているんだ!?」 巨木をたたえる池の水は一片のくもりもなく磨きあげられた鏡の様、波が無ければ鏡面世界への入り口に見えた。 和馬は歩き出す。先ほど入って来た入り口を探すために。 「ここら辺か…」 ほどなくして見つけた。恐らく場所は間違っていない。和馬は、池とは反対方向林の奥を覗き込む。だが、木々の多さに遠くまでは見渡せなかった。 ふと…見覚えのあるものを見つけた。それは、先ほど瑞希と買った自分の手袋、何故夢の中にしかも何故あんなところに…? 「取れるか…」 和馬は身を乗り出し手袋に手を伸ばした。と、その時…あるはずの地面は無くなり、和馬の体は闇に沈んでいく…飲み込まれまいと、必死にもがくがまるで底無し沼に沈んでいくようだった。 「くそ…なんだよこれ!?どうなっているんだ??」 諦めかけたとき先ほど取り損ねた手袋が…意識は遠退けど、しっかり、はっきりと彼の手を掴んだ。
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