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チュンチュン、という鳥のさえずりで目を覚ました。彼に連れて来られて安心したのかいつのまにか眠ってしまったようだ。6畳程の診察室は、小学生の予防接種時によく保健室で嗅いだ記憶のある消毒液のツンとする匂いが、たちこめている。
小さな診察室のベッドで寝かされていた私は、これからまた孤独な一日が始まるのだと思い、早くも憂鬱な気持ちになった。
手術台よりも安っぽい診察台に薄い敷布団を敷いた固いところで寝たにも関わらず、身体はやたら軽く、自分のものではないような錯覚に陥るものであった。
周りに仕切りはあったのだが、やはりこういうところでずっと眠っているのはきまりが悪い気がしたので、お礼をし、とお金だけ払って、早々に立ち去ることにした。
「…お礼の品物でも買って、彼に届けようかな…」
外出する理由のなく、引きこもりがちな私ではあったが、外出目的をみつけられて、さらに彼へ感謝するのであった。
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