51人が本棚に入れています
本棚に追加
全員と思ったが、自分の斜め前が空いているのに真理は気付いた。
偶然か、幹事の二人は真理の前と横にいので、前にいる佐藤美希子に聞いた。
「ね、そこ誰か来るの?」
「ん?由里香がくるよん」
お肉が焼けるのが待ち通しいのか、さっきからしきりにひっくり返したりしながら美希子が言った。
「バイトで遅刻だって」
隣にいる、もう一人の幹事の高橋輝が続けて言った。
(来ないんだ。)
真理は何となく“あいつ”が来るような気がしていた。
別にどうというわけではなく、ただ単純に、“あいつ”はこのクラスが好きだったから。
“あいつ”のことで真理が一番始めに思い出すのは、中三の夏。図書室。
「真理?」
ぼ~っとしてたのか、隣にいた宮川鈴に真理は見られていた。
「食べないとなくなっちゃうよ?」
鈴はおっとり笑った。
真理が見てみると、確かに美希子と高橋は会話も少なく食べていた。
「持ってくるから大丈夫」
真理は鈴に笑って言った。
「食べ放だもんね」
にっこりと言う鈴の言葉にうなずいた。
皆今は、食べるのに夢中のようだ。
真理も、考えごとは止めて、食べるのに夢中になろうと思った。
最初のコメントを投稿しよう!