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2.
渡辺康人の元に、中学の時のクラスメートからメールが届いた。
それは同窓会の案内だった。
高一の夏休みに決行されるらしい。
渡辺は自分の席でメールを見ていた。
窓側一番後ろの席なので、溜り場となっている。
「同窓会?」
抱きつくように後ろから覗き込み、安田紗耶香は言った。
「見んなよ。」
渡辺は携帯を閉じた。
メールに返事はしていない。
紗耶香は抱きついたままだが、特に気にはしなかった。
「お前行くのかぁ?」
目の前の席に座る片岡祐介がにやにやと笑った。
渡辺はよくわからない微笑みを浮かべた。
「え?なによその笑いー」
その体勢のまま、紗耶香は渡辺を覗き込んだ。
「…そんな顔近付けて。キスしてほしいのか?」
「する?いーよ」
「ばーか」
くすくすと紗耶香は笑った。
紗耶香の腕をほどき、渡辺は立ち上がった。
「ちょっと渡辺ー?」
ドアに向かって歩きだした渡辺は、軽くひらひらと手を振った。
何故かわからないが、同窓会の話題に触れてほしくなかった。
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