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業火の中で……
西暦2038年8月、北米大陸、西海岸、サンフランシスコ。金門橋が無残に切断され、海に落ちていた。市街地は炎に焼かれ噴煙が渦巻まいている。まさに地獄、そう形容するにふさわしい光景だった。
そんな街をワンピース姿の少女が一人、幽鬼の様にさまよい歩いていた。その左手には、何か握られている。それは小さな手だった、手首から上は、なく血が滴り落ちている。
その、小さな右手の持ち主は、彼女の妹であったものだ。
焦点の合わない、虚ろな瞳で前だけを見て、ひたすら歩き続けていた。
その姿は、地獄の業火に照らされた道を歩む、獄卒の鬼を思わせた。
少女の瞳に映る、煉獄の炎はやがて、彼女の心に復讐という名の焦熱地獄を宿したのだった。
少女の名は、エリカ、12歳。彼女が復讐の鬼と化した瞬間だった。
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