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渋谷の攻防戦から1ヶ月が過ぎようとしていた。季節は梅雨の最中、6月末。その日、"アノ女"が木更津に帰ってきた。
豪一は米軍の拠点ビル内のシュミレーターでの訓練を終え外に出るとへルメットを脱ぎ捨てた。その視線の先に見覚えのある人物がいた。
以前にも増して、憎悪の焔を内にたぎらせていることを豪一は再会した瞬間、目の当たりにする。
(あちゃー、完全にハマってやがる……、重症だぞこりゃ……)
豪一の例の能力は、エリカの感情を彼の目に写し出していた。見事なまでの青、真っ青な冷たい焔がエリカを押し包んでいる。
(まあ、当然と言っちゃ、当然だがな……)
豪一の視線は右腕に注がれていた。そこにある筈のモノはなかった……。いや!?ある、存在している!。豪一の驚きの表情に気付いたエリカは静かに口を開く。
「義手よ義手!!、でも、良く出来てるでしょ?」
彼女はいつもの笑顔でニィと歯を見せると右の義手を差し出した。しっかりと握り返す豪一は更に驚く、義手なのに温かい……、それは正にヒトの手に他ならない。
「オリハルコン製よ、さすが生体金属ね人体親和性能が半端ないわ」
「これが、義手か!?、どう見ても本物だろ、縫合したんじゃねぇのか?」
「残念ながら、ダメだったみたい……、でも"コレ"は高性能よ射撃精度は上がったわね」
「あぁ、そんな重傷で銃が撃てるか普通!!」
豪一の突っ込みにエリカは当然といった態度で応じる。
「もう、体も心もポンコツなのよ私は……」
「情けない事、言うなよ少尉殿。ポンコツはポンコツなりの良さあるからな……」
エリカは豪一の言葉に素早く反応して反論する。
「それって、ほめてるの?、けなしてるの?」
「ほめてんだよ、分からねぇか?、少尉殿」
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