=起動=

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「まったく、仕方ねぇな、少尉殿、とりあえず帰りな、俺も午後からは忙しくなる。お互い無駄な時間は無いはずだぜ」 隣で、ナターシャが頷きながら聞いている。豪一の言葉にエリカは少し笑みを浮かべて答えた。 「轟二曹、貴方は選ばれてココに来たのよね……、私は自ら、選んでココに来たの……」 「ナニが言いたいんだ、少尉殿」 意味深長なエリカの言葉に今度は豪一が首をかしげる番だった。ただ、ナターシャの顔には、苦渋の表情が表れていた。 「そんな遠回しに、轟二曹の意志を批判しないの、エリカ……。貴女だって、けして誉められた動機ではないでしょう?」 確かに、ナターシャの言う通りエリカの動機は"復讐"の一言に尽きた。その為にナターシャが準備した、この軍事作戦の案件に敢えて自ら飛び込んだのだ。今更、後戻りは出来ない。 つまり、エリカは自らこの状況に積極的に参加している事を豪一に伝え、彼の受け身的な態度を批判していたのだ。もっとも、豪一にとっては業務命令であり、断る訳には、いかなかったし、いけなかったのだが……。
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