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多分それは、2人の意識の差、育ってきた環境の違いによるものだろう。 幼い時に海外で家族の大半を失ったエリカと日本国内で家族が誰一人欠ける事なく育った豪一では、余りにも環境が違いすぎた。 日本人は古来から不安定な国土に住む事によって、その復興力を磨いてきた。済んだ事は水に流す如く忘れさり、新しく建設し直す。そのリカバリー能力は世界的に見ても異常な程、突出していたといえる。 その執着心のなさが、エリカには理解出来ない。淡々粛々と感情を表に出す事なく復興に尽力していく姿は彼女から見れば、異常なまでに辛抱強い人種だとしか感じられなかった。 「なぜ、貴方は、そんなに冷静に物事を捉えられるの?、ヒトとしての感情はないの!!」 エリカのそんな質問に豪一は、やはり冷静に答える。 「憎しみや悪意でまみれた心で物事を見ても、正しい判断は出来んだろ?、ウエストポイント出の少尉らしくない口上だぞ……」 豪一が苦言を呈するのも、無理はない。軍人が感情的になって軍を動かせば、その弊害は甚大な損害を産む。すなわち、死者の山だ。
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