=起動=

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「確かに、俺は少尉殿と違って、奴らに"恨み"は、ねぇからな、退治するのは、あくまでも、仕事の一環だからな……」 そう、豪一にとっては、あくまで仕事なのだ。定められた、ルーティンワーク。エリカには、運命的(さだめ)、強制的に仕向けられたライフワークと化しているモノだが。 「聖書の一節に"すべてのことには時がある"という、言葉があるわ、今がまさに、"その時"だと私は思っているの……」 豪一は、エリカの決意の込もった、真剣な眼差しに圧倒され、それ以上は何も言えなかった。女性として、一番光輝く時期にその全てを投げうって"復讐"に全勢力を注ぎ込む彼女に驚嘆と憐れみの入り交じった、複雑な感情をいだいていた。 (少尉殿、希望が叶うって事は希望がなくなるって事だぞ……、復讐の炎を燃やす恨みっていう燃料がなくなったら、どうするつもりなんだ……) 膠着した。対ギガント戦線いや、むしろ人類にとっては押されつつある情勢を逆転する為に投入される"新型"は正に人類の命運を左右すると言っても過言ではなかった。 エリカと豪一の機体は、お互いに全く正反対の特性を持つ。生物と機械、有機質と無機質、従来からの価値観でいえば、運用、コスト的には豪一の扱う機体の圧勝だ。従来の生産ラインを使い量産できる点は非常に魅力的であった。 しかし、そんな従来の利点を犠牲にしてまでも、エリカの機体が必要な訳があった。生物としての強靭な生命力はギガント相手には、絶対必要な条件項目だったのだ。 作戦活動時間無制限の圧倒的活動力のある機体とAIを組み合わせる事で、ギガントを撃退する力を更に増強しようと人類は企んでいたのだ。
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