=起動=

30/36

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
「間合いを取らねぇと、マズイな……」 豪一は言葉を口にすると同時にホバリング機能を使い一気にエリカの機体から離れ距離を取る。 右肩にマウントされた120ミリ滑空砲がエリカの機体を正確に追尾しロックオンする。砲口から盛大な炎が吹き出し、超高速徹甲弾が空気を切り裂いて目標であるエリカの機体に吸い込まれていく。 「悪りいな、少尉殿、やるときは、きちっとやらせてもらうぜ」 豪一が呟いた先では、エリカの機体が真剣白刃取りの如く、機体の真正面で弾体をガッチリと受け止めていた。 「マジか、普通止めるか!?、音速超えてんだぞ!!、その弾は!」 その、恐るべき反射神経に豪一は背中に氷の固まりをぶちこまれた様な恐怖感に襲われていた。まさしく、背筋が凍るとは、この事だ。 「ヤバい、ヤバ過ぎるだろ……、武道の達人並みの動きを、その図体でやるなんてのは、あり得ねえ……」 豪一は、生唾をゴクリと一飲みすると、エリカの機体を見据え、次の動きに備えて等距離を取る。あまりにも人間臭いフォルムに動きそして、更に信じられない情景が豪一の目前で演じられる。 「くっ、喰ってるのか!?、弾丸を!!」 それは、まさしく、むさぼり喰っていると形容する他ない程、生々しく徹甲弾を弾頭から丸かじりしている。 「何なんだ!!、ヤツは!、整備長!」 「豪一、例の気持ち悪いヤツだ!!、サーモグラフの反応は前のヤツより鮮明だ!!、多分、活動力が半端なく上昇してやがる!!」 豊田整備長の口調がいつもより熱を帯びているのは、エリカの機体への警戒感と底知れない不気味さに対する恐怖感からだろう。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加