=起動=

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滑空砲の砲弾をむさぼり喰っているエリカの機体をオペレーションルームのモニター越しにナターシャは、じっと見つめている。 その口元には薄ら笑いを浮かべていた。隣のオペレーター女性兵士が話し掛けるのをためらう程、実に薄気味悪い笑みだ。それでも、オペレーターは勇気を絞り出し、ナターシャに進言する。 「大尉、オルタネーターのバイオニクスが異常に高いのですが、抑制剤を注入しますか?」 「ふふ、まだ早いわ、ショーは、まだ始まったばかりよ」 ナターシャの言葉にオペレーターは戦慄を覚えた。この異常な状況をショーと言い切る神経は尋常成らざる思考の持ち主としか言い様のない。オペレーターは心中で苦い表情をするが、それをおくびにも出さず、ナターシャに次の言葉を投げ掛けた。 「操縦士(オルタネーター)にソレなりの負荷が掛かりますが、よろしいですか?」 「ソレは、アノ娘(コ)も了承済みよ。コレは実験だから、何らかのリスクを伴うのは当然、計算の内よ、構わないから続けて」 操縦士の了承を得ているからと、危険な操作が許されるはずはない。普通は安全第一が基本中の基本だ。だが、この人には、その基本的理念が欠けていると、オペレーターは感じていた。
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