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そして、強靭な足腰の人工筋肉から絞り出される圧倒的な脚力が伝達されたエリカの機体は土煙を上げて地面を抉り取りながら猛然と豪一の機体目掛けて突っ込んできた。
「なんちゅう脚力だ、ヒトなら世界記録モノだぜ!!」
「轟先輩!!、何、呑気な事言ってるんですか!!、直ぐに後退して下さい」
「ダメだな、間に合わねぇ、こういう時は真正面から受け止めてやらねぇとな、少尉殿に失礼だろ?」
さくらは、豪一のこの答えに、男の痩せ我慢を感じる、男は基本的にロマンチストだ、状況に溺れて我を失う。もっとも、豪一の場合はテストパイロットとして逃げるわけにいかない事情もあった。テスターとして真正面から受け止め対応策を見せ付け問題点を炙りだすのも仕事の一つだからだ。
「男はつらいよ!!ってか、少尉殿、只ではヤラれないぜ、腕一本、もらってくぜ!!」
そう言うと、機体の腰にマウントされた、機甲歩兵用のハイパーチェーンソーを稼働させ両腕で携えると正面に構えた。
襲いかかってきた瞬間に全力で相手に叩き込む。技でなく力任せの一撃だ。決め手はタイミングの一言に尽きた。必殺の一撃がエリカの機体頭上目掛けて振り降ろされる。砂塵に視界を奪われた豪一は、モニターをサーモグラフに切り替えた。高温を示した赤い影がモニター一面に拡がる。
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