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その様子をモニター越しに観察しているナターシャは右手を上げて、エリカの動きを制止すべく合図をオペレーターに出したのだが、エリカの機体は止まらない。
オペレーターの動きが、慌ただしくなり、交信のやり取りが頻繁に交わされる状況は、明らかに異常な状態を示すものだった。
「ドブスレンコ大尉、ビルシュタイン少尉から応答がありません!、自閉症モードにゴースト・ダウンしています!!」
「ゴースト・ダウンねぇ……、やっぱり心にキズを抱えてると侵食され易いわね、アンチ・ゴースト・リキッドを注入して!」
ナターシャの言葉に素早く反応した、女性オペレーターがキーボードを叩くと、エリカの機体は動きを鈍らせる。ホッとした表情を取り戻したナターシャとオペレーター達が次の作業に取り掛かかろうとした瞬間、エリカの機体は、思い切りのけ反り体つきを変化させた。まがまがし色合いの装甲表面と異常なまでに発達した筋肉が機体を一回り大きく見せている。
「轟二曹の機体に回線を開いて!!」
ナターシャの顔に焦りの表情が浮かぶ、回線がつながる間合いが、もどかしく感じるのか、つま先でせわしなく床を叩いている。やがて、モニター画面に豪一の姿が浮かび上がる。
「よう~っ、大尉、相変わらず麗しいねぇ、デートのお誘いかい?」
「この非常時によく、そんな冗談を叩けるわね!!、轟二曹、今すぐ逃げて!」
「言われなくても、撤収するぜ、そんなに急かすなよ大尉殿」
「そうじゃなくて!!、エリカの機体にエラーが出たの、直ぐにそこから離れて!!」
いつも冷静なナターシャがここまで慌てる姿に豪一は状況が異常な事態に陥っている事を悟り、機体を後退させるべくホバリング機能を全開にして下がりはじめた。
その豪一の機体をエリカの機体は捕まえる。
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