=起動=

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彼女は一瞬、自分が何故ここに居るのか分からなかった。しかし、見慣れた天井が目の前にある事でソコが自分達の拠点ビルである事を理解した。 アメリカ側の拠点ビルのメディカルルームにエリカは寝かされていた。数多くの検査、測定機器に囲まれ、まるで集中治療室だ。 そこへ、ナターシャと豪一が入ってくる。ホッとした表情のナターシャと心配気な表情の豪一、エリカとしては、余り見られたくない姿だ。 「気分は、どう?、エリカ」 「良くは、ないわね……」 不機嫌気味に答えるエリカにナターシャは少し困り顔で、豪一の方に小首を傾げて苦笑する。 「あんまり、考え込むなよ、誰だって失敗はあるからな」 「私を助けてくれたみたいだけど、さぞかしイイ気分でしょうね!!」 エリカは自らのプライドから本心と裏腹な言葉を豪一にぶつけてしまう。思い通りに成らない物事に立腹し八つ当たりする姿はまるで子供のソレだ。 「少尉殿、気持ちは分からんでもないが、"ありがとう"の一言は欲しかったな……」 豪一の目が悲しい色に染まる、エリカはその目に余計、自らの矮小な心根を感じていたたまれなくなる。 「帰って、今すぐ、帰って!!」 エリカの余りに身勝手な言い草にナターシャは、怒ろうとするが、それを豪一が制した。 「いろいろあって、疲れてるな、飯食って、たっぷり寝るこった。人間、余裕ってのが大切だぜ、少尉殿」 豪一は、そう言ってエリカの背中を思い切り叩いた。彼女は痛さに顔をしかめ、空咳をする位、強烈な一撃だ。 「もうーっ!!、そういう所がイヤなの!!、早く帰って!!」 「まったく、嫌われたもんだな、まぁ、帰るわ。それと一言いいか?、少尉殿。あんた、むくれ顔より笑顔の方がいい表情してるぜ」 そう言い残して、豪一はメディカルルームを後にする。その後ろ姿をエリカは複雑な心境で見送るのであった。
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